俺は、父さんに怒りたかっただけだった。
小さい頃、夏のある日、夜、花火をひとしきり遊んだ後、帰り道に、自分の足に火が落ちた。
それは、父さんが吸っていた、たばこの火なのか、花火が消え損なっていたのか、今となっては、分からないのだけど、
それは、父さんのせいだと思った。実際に父さんのせいかは、分からないけど、その時の記憶は、確実に父さんがやったことだった。
足に落ちた火は、熱かった。今でも足には後が残る。そのときに、父さんが、自分にたいして謝りもしなかったのが、ものすごく嫌だった。熱って大きな声で叫んだのに。
そんなことも忘れて大人になった。態度にこそ出さないものの、世の中に不満だらけだった。人からひどいことを言われた時も、内心は、すごい憤慨してた。
でも、怒れない人間だった。でも今日、気づいた。本当に怒りたかったのは、父さん相手だったんだ。あの花火の時かは、正確には、分からないけど、とにかく父さんに対してムカついてたんだ。暴力やワンマンに。言いたいこと言ってやりたかったんだ。
そこに気づいた時、怒りが、すっとおさまった。今まで色んな人にムカついてたのは、ここが原因だったんだ。あの時の感情を、消化できてなかったんだ。
「謝ってよ!!!」
あの時、言えなかった、言葉が、僕の記憶の中で、叫び出す。
そうして、あの時の感情は、成仏する。
そうして、また僕は、人生を歩いていく。
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